O.T.G. Colors #2 町田ライブ 雪と「夢」
新曲「Snow Train」を初演する予定のこの日の前日、関東に大寒波が訪れ、東京でも雪になった。
11月の東京に雪が積もるのは実に54年ぶり。自分が生まれた年の秋の終わりにあったこの景色を、新たな気持ちでO.T.G.を始めた今年、それも「雪の曲」を演奏する前日に見ることになったのは出来すぎた偶然ではないか。
「Snow Train」という曲を作ろうと思ったのには、次の一件を思い出したこともきっかけとなっている。
—— 札幌に向かう寝台特急「北斗星」。雪の中を疾走する午前2時、ふと眼を覚ますと車体が折からの強風にあおられ傾き、脱線、横転かと思われたとき、スッと元の状態に返り、安定走行を始めた。ほっと胸をなでおろしたとき、妻はそんなことも知らず安らかな寝息を立てていた。
翌朝、白銀の雪景色の中を走る車内で、夜中に強風に煽られ、横転事故かと思った一件を妻に話すと、彼女も昨晩見た夢に、私の「早くに死別した母」が現れたことを話し出した。
「夢に母が現れ、こちらをじっと見ている。お母さんですね。と尋ねると、はにかんだような薄い笑みを浮かべるだけで声を出さず、やはりこちらをじっとみている。そしてスっと消えて見えなくなったとき、自分も深い眠りにおちていった」
と、こんな話しだった。妻は、写真でしか見ることができなかった私の母と夢のなかで会えて嬉しかったそうだ。——
今回は茅ヶ崎、武蔵小金井など遠方からわざわざ足を運んでくださったお客様を前に、そして〜Colors〜#1のときから欠かさず聴いてくださっている方の前での演奏で、有り難さを胸に感じながら一曲一曲を丁寧に仕上げることに集中できた。
アンコールの「Lawns」の演奏を聴き返すと「人影の見えなくなった芝生」が見えてくる。
なにごともなかったかのように緑に広がる「日常的な景色」。様々な思いを持つ人々の姿と「芝」がオーバーラップしていく。
〜Colors〜#2の自分のテーマカラーは「赤」だった。
これからはその「赤」に「緑」がオーバーラップしてくる予感がしている。
緑が意味するものを感じ、味わいながら、ゆっくり歩いていこうと思う。